マンホールの光

いくつかのマンホールがあって
その中の一つ一つを丹念に覗いてみた
中はどれも底の見えない空洞だ


私は密林に棲む獣の目になり
暗闇の先を凝視する
気を抜けば呼吸を剥奪されそうだ


トンネルの遥か先に 
わずかな光が見える
笑って いるような
躍って いるような 


遠い安息の夜に見た
石灯籠の瞬きに似た
     静謐な灯


その小さな輝きに
私の背後からこぼれる
地上の光が
距離感も掴めぬまま
マンホールの底の揺らめきに達し 
融合すると


それは存在の証明を誇示するように
わずかに浮かび上がった


             あまたの光るもの
        マンホールの先に見いだした 
             遥かな宇宙の遊星


背後の光をさらに照射すれば
光をはらんだその星は
この手元まで 浮かび上がってくるのだろうか


                  指先に
                   腕に
                   体に
                頭脳に光を


密林に棲む獣の目で見つめている限り
遊星は浮かび来ない
光は賢さと 受けとめる器を望んでる