PATINA「緑青」3

指示通りに辿り着いた先にはまた別の番人がいて、 水色の招待券の回収をしていました。 引き換えに渡されたのが、龍を彫刻した水晶玉でした。 直径10センチほどのそれは、見れば観るほど美しく、 空にかざすと、龍はまるで呼吸をしているように見えるのです…

patina「緑青」2

その時私は自然とはなにか、 生きるとはなにか、と考えていたのです。 好んで禅問答はするものです。 それが私の流儀です。 すると、いつか現われた時の番人が タバコの煙とともに突然姿を見せました。 (そうそう、時の番人とはイスラームの世界で言う 超自…

patina「緑青」1

私はとある偶然から夢の国へ行きました。 その国が何処にあるかといいますと、 高架線の鉄塔の頂上からゴンドラに乗って、 電線づたいに揺られて、たどり着いたどこかです。 古都鎌倉の時空をさまよう谷戸の中かも知れませんし、 空と海がくっついてできた結…

グッドラック

ある日、若い青年とサシで飲みました。 恋する気持ちのあれこれを、 彼は幸せそうに話すのでありました。 いままさに恋です。2つ年上の女性に恋焦がれているのです。 紅潮し、蒸留された思いを伝える言葉は、 耳を塞ぎたくなるほど恥ずかしいものでした。 …

沖縄

沖縄に行ってきました。 取材でしたが、沖縄の天地人を満喫。 ちゅら海水族館が圧巻でした。 水族館の取材がけっこう多くて、 ずいぶんいろんな所に行きましたが、 ここのジンベイザメがすごい。 すこぶる大きい。やたら大きい。 なのに、エサはオキアミやプ…

ありがとう

今年の夏に 捧げた時間 ひとつ前の季節を思い はぁーふっーう と 深呼吸 悪夢のような日々でした かなりかなりの夏でした でも でも 鎌倉の青い空 夕立に光る稲妻 汗だくの取材 ありがとうの言葉 絵のように広がる自然の中で 温かいふれあいがありました 海…

もう秋が来てました。知らない間に満月は やせては消えて、 消えてはあらわれて。 この頃は 前に進むことばかり 考えるのをやめました。 「嘘をついてもばれるものです」 といったのは、 亡くなってしまったCM作家 夢もないのに夢は売れないと。 振り返り、…

ベール

肩の力を抜いたら 今までのことがなんであったのか 思いだせないくらい楽になったよ。 ふわっとして、くすぐったい感じ。 どうしてそんなことにこだわって、 ただひたすら意気込んでいたのか。 今となっては、 おかしいやら、 歯がゆいやら、 つまり、なぞ。…

雨上がりの南天の

雨上がりの南天の枝を 揺さぶってみる。 枝一杯に広がる葉に付いた無数の雨が 一気に飛び散って 私の袖はビッショリだ。 それまで雨の重さでしなだれた枝は、 一気にすっくと立ち上がり、 また元の見馴れた南天になっている。 そこで私は、ほほほ、と笑う。 …

明日は晴れ。

複雑は好まない。 単純にして明快。 まっすぐ、一途に。 くじけず、あきらめず、 たよらず、ただひたすらに。 そんなことを豪語した、秋の早朝。

揺れる。

野生の響きがする からだの中で ボコボコと。 コーヒーサイフォンの 音みたいに ボコボコ、ポコポコ、 コポコポと。 からだが笑う。 からだが騒ぐ。 からだが揺れる。 何かが始まる 原始の音だ。

ふたたび、空へ。

壁を上るんだ。 いっちに、いっちに。 ロッククライミングなら得意なの。 手と足のバランスに気をつけて。 クロスして、空へ。 リンクして、また空へ。 安全な道を選ぶのか、 最短のスピードを選ぶのか。 安全で最短の、道はどこ? いっちに、いっちに。 リ…

散歩の途中

本当のことがいえない時に あなたの顔をじっと見ていれば、 気持ちは伝わるのでしょうか。 夜の街をただひたすら歩いて、 言葉にするチャンスを探していたのだけれど、 どうしてもいえなかった。 遠い国の話、 時間の短さの話、 将来の夢の話、 アキ・カウリ…

月よ 月よ 月よ月

そろそろ月を見にいきましょう。 丘の上にぽっかり浮かぶ、 まあるく蒼いお月さま。 それとも海を銀色に染める 霞の中のお月さま。 足元からせり上がる風が強ければ、 草むらに身を沈めて見上げます。 凍えながらも見上げてみます。 見つめ過ぎて首は上方4…

道路工事の旗振りの 年のころ70歳代と おぼしきおばさんの トンチンカンな誘導に 泣き笑う 罵詈雑言誘ってどうするの そんな 一所懸命 頭 下げてどうするの そうやって あなたは お辞儀ばかりで 暮らしてきたの? 悲しさなんて どこにでも転がっているから…

アーカイブ

記憶すること 受けとめること 感じること すべてを 脳内アーカイブに投げ入れる (雑多にごちゃごちゃと) いつか ストックされた 雑多な無形物が ワタシという人間の 製造マシーンで 有形化する時がきっと来る 記録保存所に投げ込まれた情報は ある瞬間 存…

茜空

夕焼けの桜吹雪の中で のんきな君と とりとめのない話がしたい たとえば 今度の仕事の話や 深夜の駐車場に集まる のら猫たちの 会合時間について とか。 時々 笑ったりして 茜雲の間から 春をさらうような風が吹いてきて ざわざわと、木々が揺れる 桜の花び…

ここにいる

小さき心に 打開の風よ吹け 閉じた世界に 光明を 身振り手振りで 言語の外の感情を ここに! ここに! ここに! 吐いてしまえ 慟哭し 砕け 再生するんだ 私は待つ 私は見てる 私は身を賭してでも 君の未来を守りたい いつだって 君を受けとめる 小さき心に …

空耳

悪戯な三月は季節も、心も 一進一退を繰り返す 先に進もうとすれば、 冷たい春の嵐が 浮かれた五体と 根拠のない高揚感を ブローする 遠い日の声が耳元に届く 「いい気になるなよ」 あれは 校則破リを侵した日に 足早に通り過ぎていった 高校教師の憤りだっ…

マンホールの光

いくつかのマンホールがあって その中の一つ一つを丹念に覗いてみた 中はどれも底の見えない空洞だ 私は密林に棲む獣の目になり 暗闇の先を凝視する 気を抜けば呼吸を剥奪されそうだ トンネルの遥か先に わずかな光が見える 笑って いるような 躍って いるよ…

魑魅魍魎が支配するこの現し世は 成長しきれない脆い子供の骨で作られる あまりにも細く儚く頼りない 魔界に棲む獣たちが携えている荷物には 本能や煩悩や陵辱的な知識が積まれてる 学識は人を騙すための道具に成り下がる 恥辱とは 何 尊厳とは何か 人ほど怖…

未明の街

時が流れてく トクトクと ワッショイと 連なりながら ふふと、微笑みながら さっきまでいた君の吐息 一歩前の歩行の姿勢 通り過ぎた孤独な横顔 始発前の電飾の瞬き 思いだし笑いの笑窪後 階段を駆け降りた動悸 無駄なことも 大切なことも 死守することも 背…

クオリア

朽ちたベンチのめくれた座面 生まれたばかりの戸惑うため息 青色発光ダイオードの光の残像 捨てられたぬいぐるみの汚れ 屹立する高層ビルの天辺 脳の中に芽生えた おびただしい数の 説明できない新しいクオリア 私の存在 君の存在 我らの存在 未知を開拓し …

本日

あたらしい 暦 あたらしい手帳 あたらしいペン あたらしい 靴 りゅーんりゅーんと 心 フルワセル あたらしい道標 あたらしい 道 あたらしい 風 あたらしい口紅 びゅ−んびゅ−んと 心 サラワレル クロスしてリンクする希望 新しいことの一切宝的受領大海のパッ…

燃えつきない流星

青空の下で君と会う 君は体をかばいながらやってきた 突然倒れたあの日から五つ目の冬が来たんだ 空はあんなに澄んでいる 通りの風が冷たいよ 麻痺した左手も 曲がらなくなった左足も 会話を奪われた言語障害も 君を幼くさせているけれど 笑顔はあの時のまま…

ロンド

廻る廻る廻る 夜の公園の水銀灯の下で 繋いだ手が離れないよう 握る力のバランスに気をつけて 終りの合図は決めてない 君と私のあてないロンド

救済

君の背後に にじり忍び寄り そっと抱きしめて 私は手のひらを 分厚いその口びるに 押し当てる 手の平の筋から吸収される 言語洪水のエクスタシー 君の声の中で溺れて忘我する 私を突つく言葉はドープ 私の日常を抹殺し 破壊しながら互助してる 私は 息を止め…

影遊び

唐突に光が 顔をのぞかせて 向き合った君の顔が 一瞬にして見えなくなった 光は影を従えて 遠ざかろうとしている イマ キミハ ワラッテ マスカ 光の中に君が吸い込まれて 私はその白い顔に手をのばす 光の踊り場に映し出される影は 本心を語れない君の分身 …

凍える朝

コンビニの駐車場で うずくまる せつない少女 沈黙の鬼胎を宿す 現実の 生は見えない 脳にみごもる 空洞の寝室

朝露

君の透き通った瞳に宿る 幼い野望をかなえるために 私は朝露がついた路端の花を 一輪摘んでおきましょう 大きなテーブルの真ん中に ペンダントライトのすぐ下に キレるほどの寒さが消えて 朝露が花にしみ渡り 決められた時間が来る頃に 君は気流に乗って昇れ…