深夜のダイアローグ

 

足音がついてくる
一歩遅れて夜の通りをついてくる      


  後ろを振り向いて道連れですかと    
  問いたいけれど 勇気が湧かない


雨降りの深夜は人影も無く
雨音とふたつの足音と
にわかに高鳴る心音が傘の中を駆け回る


しばらく一緒に歩いてみたが
三味線教授の家の前で
ひとつの足音が消えた
立ち止まり 後ろを向いた


三味線教授の家は真っ暗だった
板塀に映る私の影と私が一人佇むだけだ

  
  消えた足音は乖離した 私自身
  道連れが欲しかったのは私自身


ひとりぼっちの深夜二時
幽玄の中のパラレルワールド
浮遊するダイアローグ

雨はすでに上がっていた